近年、スポーツ施設や学校、公園で普及している人工芝ですが、その一方で「マイクロプラスチック問題」の新たな発生源として懸念されています。「環境に配慮した施設運営」が求められる今、管理者には正しい知識と具体的な対策が不可欠です。本記事では、人工芝が環境に与える影響の真実と、先行事例に学ぶ実践的な解決策を紹介します。
人工芝はプラスチック(ポリエチレンやポリプロピレンなど)で作られています。設置直後は強固ですが、長期間にわたる太陽光(紫外線)の照射や、利用者の激しい動き(スライディングや急停止)による摩擦で、芝葉は徐々に劣化・摩耗していきます。
こうして発生した微細なプラスチック片や、ちぎれた芝(パイル)は、風に飛ばされたり雨水に流されたりして排水溝へと移動します。適切なフィルターがない場合、これらは排水管を通って最終的に川や海へと流出し、分解されることなく自然界に残り続ける「マイクロプラスチック」となってしまうのです。
マイクロプラスチック問題と聞くと、サッカー場などで使われる「ロングパイル人工芝」の充填剤(黒いゴムチップ)だけが原因だと思われがちです。しかし、これは大きな誤解です。
東京都多摩市が行った調査では、テニスコートなどで使われる砂入りの「ショートパイル人工芝」からも、摩耗した芝そのもの(緑色のプラスチック片)が大量に流出していることが判明しました。つまり、ゴムチップが入っていないタイプの人工芝であっても、芝自体が摩耗する以上、対策が必要不可欠なのです。
東京都多摩市は、人工芝のマイクロプラスチック対策において全国でも先進的なモデルケースとして知られています。対策のきっかけは、市内の河川調査でした。川岸に大量の「緑色のプラスチック片」が漂着しているのが発見され、調査の結果、それが公共施設の人工芝コートから流出したものだと特定されたのです。
これを受け、多摩市は住友ゴム工業や大嘉産業といったメーカーと連携し、実証実験を開始しました。「実際にどれくらいの量が流出しているのか」を定量的に調査し、そのデータを元に具体的な対策を確立しました。
最も効果的だった「多摩市モデル」の対策は、排水溝や集水桝への「専用フィルターの設置」です。これにより、雨水と共に流れ出る人工芝片を物理的にキャッチします。また、運用面では意外な事実も判明しました。テニスボールの表面に使われる「黄色いフェルト」もプラスチック繊維であり、これも同時に流出していたのです。多摩市では、ハード面の改修だけでなく、ボランティアや利用者と協働で定期的にフィルター清掃を行うなど、地域全体で環境保全に取り組む体制を作り上げています。
参照元:(pdf)多摩市役所公式HP(https://www.city.tama.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/856/gaidorain.pdf)
SDGsの観点から、既存施設の管理者がすぐに取り組める対策は、ハード(設備)とソフト(運用)の両面にあります。
物理的な流出を防ぐ設備投資を行います。最も優先すべきは、多摩市の事例でも効果が実証された「排水溝へのフィルター設置」です。近年では、既存の側溝に後付けできる安価なメッシュフィルターも開発されています。また、コートの周囲に「流出防止柵(防球ネットの足元に板を設置するなど)」を設けることで、風による飛散を大幅に抑制することが可能です。
日々の運用ルールを見直すだけでも効果があります。まず、コート出入口に「靴底洗浄マット」やブラシを設置し、利用者の靴についた芝片やチップを場外に持ち出さないようにします。
また、排水溝の定期的な清掃とフィルターのメンテナンスは欠かせません。さらに、ポスター掲示などで「利用後の靴底清掃にご協力ください」と呼びかけ、利用者自身の環境意識を高めることも重要な対策の一つです。
今後、人工芝を張り替える際や新設する際には、「環境負荷の低減」を選定基準の核に据える必要があります。
まず素材の選定においては、摩耗しにくい「高耐久性素材」を選ぶことが第一です。摩耗そのものを減らせば、発生するゴミの量も抑えられます。また、サトウキビ由来のバイオマスプラスチックを使用した製品や、使用後にリサイクルが可能な素材を選ぶことも選択肢に入ります。
そして最も重要なのが、メーカー選定の基準です。単に芝の品質や価格だけで選ぶのではなく、多摩市の事例のように「流出抑制システム(フィルターやメンテナンス計画)」まで含めて提案できるメーカーを選ぶことが、責任ある施設管理者の姿勢として求められています。
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※150万プランの「芝生」の目安金額。面積等は不明。
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